――2年ツアーやって、その後、4枚目のソロアルバムの『TRUE OBSESSIONS』を。これはまた幅が広がってバラエティーに富んでいますね。
MARTY:そう、ちょっと。残念ながら。
――残念?
MARTY:僕が好きなアルバムは、幅広さがあるものじゃない。でも、集中できたアルバム。1曲目から最後まで同じようなアルバムは理想、と言ったけど、それはとても難しいと思う。『TRUE OBSESSIONS』は、多種多彩で色々な曲を入れたけど、「1枚のアルバムじゃないですか」って……ホントは嘘なんだけど、自分で無理矢理に信じた。あ、これは同じアルバムなんですよ、と。でも深く考えれば絶対幅広すぎるという感じ。けっこう色々後悔もあるんだけど、しょうがない。良い音楽が入ってるけど、ちょっと幅広すぎると僕は思います。
――今考えると、そう思う? でも僕は好きだけどね。けっこう好きな曲があって。
MARTY:好きですか? ありがとうございます。色々入っていますね。その色々な音楽を納得してくれれば好きになるかもしれないけど、僕はファンとしては最初から最後までヘッド・バンギングとか、最初から最後まで静かな、ロマンチックな雰囲気で統一されている方がいい。すごいヘッドバンギングのあとにロマンチックな曲があったら、僕は目が回っちゃう、残念ながら(笑)。
――ははは(笑)。ではソロ・アルバムのあと96年にメガデスのアルバム『CRYPTIC WRITINGS』を出しましたね。
MARTY:そう。
――プロデューサーのダン・ハフ、には会ったことがあるんですよ。
MARTY:あ、ホント? 会ったことありますか? ジャムしたことある?
――それはないけど、すごいスタジオ・ギタリストですよね。
MARTY:うん、うますぎる。このアルバムは楽しかったですよ。ダン・ハフを迎えたから、ギタリストとして尊敬する人じゃん。近くにうまいギタリストといえば……イゲタさんもそうですけど。
――いやいや(笑)。
MARTY:(笑)。そんなに近くにいられるなら、もっと頑張らなけらばならないでしょう? もちろん、マックス・ノーマンはランディ・ローズとか高崎さんと一緒に仕事したけど、彼自身はギタリストじゃない。でも僕よりうまいギタリストがいれば、僕は頑張らなければならない、という気がする。だから、ホントにいい経験だった。
――マーティー自身、ダン・ハフを知ったきっかけは? ジャイアントでのプレイ?
MARTY:ジャイアント聴いたけど、音楽的にはあまり好きじゃなかった(笑)。もちろん彼のプレイはすごいと思ってたよ。センスも良いし、技術も完璧。
――ところで雑誌で読んだことがあるんだけど、このレコーディングではアコギをずっと弾いてたんでしょう?
MARTY:そうだっけ? 覚えてない(笑)。大変だったのは、ダン・ハフの方だったよ(笑)。最初のソロはアコギを弾いてたね。ファースト・テイクなんだけど、ダン・ハフは「それ、良いよ。カッコイイですよ」って言ってたんだけど、僕はそのテイクはボツだと思って、あぁホントに良くなかった。彼は僕のプレイについて全然知らなくて、このテイクがベストだと思われるのはすごく嫌だった。
――そこで何かやりとりがあったの?
MARTY:「僕はそんなに下手じゃないよ。もっと頑張らなきゃならないよ。その状態はチューニングだからね」と言ったんだよ、彼に。そうしたら、それでもいいと言われてとても怒った。僕は「頑張るつもりですよ」と言ったんだけど、その後ホントに標準が上がったんだよ。ソロを弾いたときに彼に「これを聴いたら、そのギタリスト、をすごいと思いますか」と。それからはすごいソロ、リズム・ギターにはとても集中しました。その前は「じゃあ、それいいよ。終わりよ。完璧だったよ、ファースト・テイクは」。それじゃ無理無理。
――アルバム自体は、どんな作品にしようと思ってた?
MARTY:これは『COUNTDOWN TO EXTINCTION』に近いかな。普通の1人ずつ録ったから。プロデューサーも曲作りを手伝ってくれたり。経験としては、ダン・ハフと一緒にやったので素晴らしかったよ。彼はロックの経験があまりないでしょ? だから彼からみたらメガデスは信じられないくらいにヘヴィだった。僕らが速弾きすると、彼は笑ってたよ(笑)。それに話し方のイントネーションも、彼は南部の人だからカントリーの雰囲気。
――日本でいうなまりみたいな?
MARTY:ダン・ハフはそういう感じで、逆に僕らは都会人だったから、環境の違う人から僕ら音楽を判断するのはおもしろかった。
――その後がツアーになるんですよね?
MARTY:うん、長い。そのツアーは長かった。225回あったと思う。
――225回!? そしてトリビュートものにも参加しますが、メガデスの99年、8枚目のアルバム『RISK』で、マーティー最後の参加アルバムという。作品としてはちょっと異色ですよね。
MARTY:異色?
――ちょっと変わった雰囲気。
MARTY:そう。最初にダン・ハフにプロデュースしてくれたアルバムは、アメリカのラジオで大ヒットしてた。ちょっとポップスぽいの曲があって、ライヴでもけっこう女性も来てくれるようになったし。
――女性のファン層が増えたんだ。
MARTY:その結果を見ると、もうちょっとその方向でやろうかな、と思ってた。メタリカがバラードを発売して大成功したから、僕らもバラード作ろうかなと思ってた。僕はポップスの大ファンだから平気だけど、ムステインてポップスはあまり好きじゃないのかもしれない。たぶん聴くのは好きだけど、でも彼の性格の中に「ポップス? 歌ってたまるか」という(笑)。よく言ってたね。でも彼はボーカリストでしょ、僕は歌わないでギターを弾くだけだけど、彼はポップスは歌いづらいと思うから。そのことについて、すごい妥協したり喧嘩したり。ポップスならポップスに、中途半端にはしない。ヘヴィなら、かなりヘヴィにしようかって。
――中途半端は嫌なんでしょ?
MARTY:ちょっとヘヴィ、ちょっとポップスで平均的にしちゃダメと思ってた。僕はとてもガッカリだったよ。音楽的にはすごい中途半端なところがいっぱいあるので、ちょっとこのバンドは辞めようかな、と思ってた。音楽的な部分だけでね。メンバー間も基本的にはとてもうまくやっていた。
――じゃ、本当に音楽面だけでの決断だったんだ。
MARTY:エクストリームなヘヴィ曲だったら、信じられないくらいにヘヴィな曲をやりたかった。それに99年は、メガデスよりヘヴィバンド、けっこういましたよ。それが現代のヘヴィ・メタルなんだけど、メガデスと比べたら、全く違うじゃん。なんでヘヴィ・メタルの代表としてメガデスという怖い名前があるのに、ヘヴィなバンドがいる中で僕らが妥協しなきゃいけないのか、僕はずっと主張していた。でも理解してくれなかったから、それはちょっとガッカリ。
――そうか、マーティーとしては納得できなかったんだ。
MARTY:うん。ツアーをしてみたら結果的には、前のアルバムより売れなかったし。いろいろがあったので、気がついたら脱退してた。
――売れないって言ってもゴールド・ディスクになってるよね。
MARTY:そうなんだけど、ダブルプラチナからシングルプラチナ、そこからゴールドディスクっていう傾向を見るとね……。しかもライヴ会場のサイズも縮んでたし、特に日本ね。日本は特に痛んだ。痛みました。
――心が痛んだの?
MARTY:そうそう。日本に来ると、場所はオール・スタンディングのライヴハウスになってたりして、恥ずかしいというほどじゃないけどちょっとね。10年頑張ったのに、最終的にこれほど縮んでしまうなら、僕はやらない方がいいと思ってた。
――ライヴなんかやらなくていい?
MARTY:ちょっと誇り高いから。「お客さんがいるから頑張らなきゃ」って言われたけど、彼らの考えても納得してあげることはできなかった。今の音楽はあまり好きじゃないのに、どうして芝居しなければならない? 新しい音楽はあまり好きじゃないのに、好きなフリをするのは嫌だった。ファンは6000円も払って観に来てくれるのに、僕は芝居している。「楽しい! 楽しい!」って芝居するのはダメと思った。だから辞めた。
――メガデスで来日したとき会場はどのあたりだったんですか?
MARTY:平均では厚生年金会館とかNHKホールとか、そのくらいのホール。武道館でやる予定もあってチケットはソールドアウトだったけど、急にキャンセルしました。『COUNTDOWN TO EXTINCTION』の時代だったかな。
――キャンセルしちゃったの?
MARTY:うん。武道館でライヴするのは僕の夢だったかられは残念だったけど。というのは、子供の時ね、チープ・トリックの武道館でのライヴ・アルバムが好きだったんだよ。当時は「ブドウカンて何ですか?」って思ってたけどね(笑)。
――それがどうしてキャンセルになっちゃったの?
MARTY:あの〜、麻薬の問題で。でもその後、何回も日本来るたびにファンたちが応援してくれたから、とても嬉しかった。そういえば『CRYPTIC WRITINGS』の時には2回も来たんだよ。2回ともソールドアウトで大成功だった。ホントに日本のファンたちは世界一ですよ。応援してくれた。
――そうだったんだ。『RISK』を出したときは日本に来た?
MARTY:『RISK』の時は日本に来なかった、と思う。日本の環境に入りたくなかった。悲しすぎるから。自分の新しい方向に行きたかった。あれからのメガデスの音楽には僕の名前を入れたくなかった。だって中途半端という感じだったでしょ。平均的なものよりもとても悪いアルバムの方がマシと思ってた。だから僕は、辞めた。抜けた。
――その後、マーティーはトリビュート・アルバムなどに参加して。今年の4月にメガデスが解散した。
MARTY:そう。
――ムスティンの病気が原因ですか?
MARTY:たぶんね。そのとき僕はもう抜けていたから、ホントの理由は知らないけど。でも、それは彼の理由だから、僕は関係ない。
――マーティー自身はMR.ORANGEのアルバム『JAMBARAYA』に参加しましたが、彼らと接点があったんですか?
MARTY:たまたま(笑)。ショーン君て知ってる? 彼のお父さんとは友達で、僕がたまたま日本にいたので、「じゃあ、やってくれ」と言われてやってみたら楽しかった。良い雰囲気だったしね。いい雰囲気があるなら、僕は全然遠慮しないで入るよ。
――で、できたばかりのマーティーのソロ・アルバムはいつごろリリースされそうですか?
MARTY:来年の1月かもしれない。はっきり分からないけど。今度の滞在の内に全部片づけます。
――そのアルバムではGT-6をメインで使ったんですか?
MARTY:メインじゃないけど、作る前にちょうどGT-6を貰ったので、けっこう楽しんで試してみました。他にも機材をとてもドッサリ(笑)。手当たり次第に何でもやってみました。
――そんなに使ったら、どの曲で何を使ったか覚えてないよね(笑)?
MARTY:でも、割と覚えてるよ。ギターは30本くらい使った。僕のギター・テクニシャンは、けっこういいギターを持っているので、いっぱい借りたし、僕モデルのJAKSONも使ったし、ギブソンのレス・ポール、フェンダー。いっぱい手当たり次ね。そのパートにふさわしいものがあればそれを使う。
――曲のバックはバンド演奏?
MARTY:バンド。ドラムとか自分でやったんだけど、ループとかシーケンスとかをよく使いました。ループ作るのが楽しくなったから(笑)。ソフトはローランドのグルーブ・ボックスと、ネメシスのギガ・スタジオ。色々なサンプル・ライブラリーのCDが入ってるんだよ。あちこちから音を集めていっぱい自分の新しいループを作って、シーケンサーはデジタル・パフォーマーに貼りました。ループなんかと生のドラムと合わせるのは大好きです。今回はけっこう使った。あまり目立たないけど、でもちょっと雰囲気がフルの感じとは思う。パワフル。普通のジョン・ボーナムみたいな、普通の……じゃなくて(笑)、もうちょっとモダンな感じになってるよ。
MARTY FRIEDMAN
『TRUE OBSESSIONS』

 

 

 

MEGADETH
『CRYPTIC WRITINGS』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MEGADETH
『RISK』